ウあらば、願ひのままにその方に暇をつかはすべし。悪僧は今暫し傍におきて諭すべしといふに――これは手ぬるい。ねえ、老師。少し手ぬるいじゃござんせんか。」
「どうでもいい、そんなことは。早く後を読み続けなさい。」
 和尚はわざと突っ放すように言った。甚斎は亀の子のように首をすくめた。
「この僧大いに怨み、われ暇のこと申さば、悪僧を追出し給はんと思ふものから、それを却つて罪なきわれに暇給はること、近頃|依怙《えこ》の心に非ずやといへば、住持答へて、さにあらず、御身は今この寺を出でたりとも、僧一人の勤めはなるものなり。悪僧は今わが傍《かたえ》を離るれば、忽ち捕はれて罪人とならんも計り難し。さすれば……」
 甚斎は間《ま》が悪いように段々と声を落して、くどくどと口のなかで読み下した。
「もっと声を大きくして……」
 和尚は注意をした。甚斎の声は灯《ひ》をかきたてたように、またぱっと明るくなった。
「わが徳も捨たれて、一人の弟子を失ふなり。故に傍《かたえ》に暫し置きて、彼が命をも延ばし、且は厳しく教戒をもせば、善心に立ち返ることもやありなんと思ふが故なり、と言へば、悪僧このことを聞き、師の厚恩に感
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