ゥたまり生えているのが眼についた。昨日の夕方、雨の庭を眺めたときには、それらしい影も形も見えなかったのに……。
京都の三条大橋の東に檀王法林寺というお寺がある。そこの境内から川端へ抜けるところに赤門があり、夕方になると閉されるが、いつ締まるのか誰もそれを見かけたものがない。川向うの上木屋町あたりで若い妓《おんな》たちが、この門の締まるのを見ると、有卦に入るといって、欄干にもたれてじっとそれを待っているが、見ているときには締まらないで、ちょっと眼を外《そ》っ方《ぽう》に逸らした時に、ちゃんと閉じられているということだ。
ちょうどそのように、誰の眼にも気づかれないうちに、菌はひょっこりと地べたに飛出している。うるさい人間の「おせっかい」と「眼」との隙を見つけて、そこにほっと呼吸をついているといったように。
このわび人たちは、仲間にはぐれないように互に肩をくっつけ合い、蓋《かさ》を傾け合って、ひそひそ声で話している。時偶庭木の葉を洩れて、日光がちらちらと零《こぼ》れかかると、菌たちはとんでもない邪魔ものに闖入せられたかのように、襟もとを顫わせて嫌がっている。わび人はわび人らしく、じめじ
前へ
次へ
全242ページ中168ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
薄田 泣菫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング