開く必要もなくなる訳だ。第一常識から云《い》っても分ってる。おれが大人しく宿直をする。生徒が乱暴をする。わるいのは校長でもなけりゃ、おれでもない、生徒だけに極《きま》ってる。もし山嵐が煽動《せんどう》したとすれば、生徒と山嵐を退治《たいじ》ればそれでたくさんだ。人の尻《しり》を自分で背負《しょ》い込《こ》んで、おれの尻だ、おれの尻だと吹き散らかす奴が、どこの国にあるもんか、狸でなくっちゃ出来る芸当じゃない。彼《かれ》はこんな条理《じょうり》に適《かな》わない議論を吐《は》いて、得意気に一同を見廻した。ところが誰も口を開くものがない。博物の教師は第一教場の屋根に烏《からす》がとまってるのを眺《なが》めている。漢学の先生は蒟蒻版《こんにゃくばん》を畳《たた》んだり、延ばしたりしてる。山嵐はまだおれの顔をにらめている。会議と云うものが、こんな馬鹿気《ばかげ》たものなら、欠席して昼寝でもしている方がましだ。
 おれは、じれったくなったから、一番大いに弁じてやろうと思って、半分尻をあげかけたら、赤シャツが何か云い出したから、やめにした。見るとパイプをしまって、縞《しま》のある絹ハンケチで顔をふき
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