ちゃんだから愛嬌《あいきょう》がありますよ」「増給がいやだの辞表を出したいのって、ありゃどうしても神経に異状があるに相違ない」おれは窓をあけて、二階から飛び下りて、思う様|打《ぶ》ちのめしてやろうと思ったが、やっとの事で辛防《しんぼう》した。二人はハハハハと笑いながら、瓦斯燈の下を潜《くぐ》って、角屋の中へはいった。
「おい」
「おい」
「来たぜ」
「とうとう来た」
「これでようやく安心した」
「野だの畜生、おれの事を勇み肌の坊っちゃんだと抜《ぬ》かしやがった」
「邪魔物と云うのは、おれの事だぜ。失敬千万な」
おれと山嵐は二人の帰路を要撃《ようげき》しなければならない。しかし二人はいつ出てくるか見当がつかない。山嵐は下へ行って今夜ことによると夜中に用事があって出るかも知れないから、出られるようにしておいてくれと頼《たの》んで来た。今思うと、よく宿のものが承知したものだ。大抵《たいてい》なら泥棒《どろぼう》と間違えられるところだ。
赤シャツの来るのを待ち受けたのはつらかったが、出て来るのをじっとして待ってるのはなおつらい。寝る訳には行かないし、始終障子の隙《すき》から睨めているのもつ
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