ったと話したら、大将大きに喜んでさすが江戸っ子だ、えらいと賞《ほ》めてくれた。
うらなりが、そんなに厭《いや》がっているなら、なぜ留任の運動をしてやらなかったと聞いてみたら、うらなりから話を聞いた時は、既《すで》にきまってしまって、校長へ二度、赤シャツへ一度行って談判してみたが、どうする事も出来なかったと話した。それについても古賀があまり好人物過ぎるから困る。赤シャツから話があった時、断然断わるか、一応考えてみますと逃《に》げればいいのに、あの弁舌に胡魔化されて、即席《そくせき》に許諾《きょだく》したものだから、あとからお母《っか》さんが泣きついても、自分が談判に行っても役に立たなかったと非常に残念がった。
今度の事件は全く赤シャツが、うらなりを遠ざけて、マドンナを手に入れる策略なんだろうとおれが云ったら、無論そうに違いない。あいつは大人《おとな》しい顔をして、悪事を働いて、人が何か云うと、ちゃんと逃道《にげみち》を拵《こしら》えて待ってるんだから、よっぽど奸物《かんぶつ》だ。あんな奴にかかっては鉄拳制裁《てっけんせいさい》でなくっちゃ利かないと、瘤《こぶ》だらけの腕《うで》をまく
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