り厳重な罰などをするとかえって反動を起していけないでしょう。やっぱり教頭のおっしゃる通り、寛な方に賛成します」と弱い事を云った。左隣の漢学は穏便説《おんびんせつ》に賛成と云った。歴史も教頭と同説だと云った。忌々《いまいま》しい、大抵のものは赤シャツ党だ。こんな連中が寄り合って学校を立てていりゃ世話はない。おれは生徒をあやまらせるか、辞職するか二つのうち一つに極めてるんだから、もし赤シャツが勝ちを制したら、早速うちへ帰って荷作りをする覚悟《かくご》でいた。どうせ、こんな手合《てあい》を弁口《べんこう》で屈伏《くっぷく》させる手際はなし、させたところでいつまでご交際を願うのは、こっちでご免だ。学校に居ないとすればどうなったって構うもんか。また何か云うと笑うに違いない。だれが云うもんかと澄《すま》していた。
 すると今までだまって聞いていた山嵐が奮然として、起ち上がった。野郎また赤シャツ賛成の意を表するな、どうせ、貴様とは喧嘩だ、勝手にしろと見ていると山嵐は硝子《ガラス》窓を振《ふる》わせるような声で「私《わたくし》は教頭及びその他諸君のお説には全然不同意であります。というものはこの事件はど
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