せんどうも歩調が揃《そろ》わぬ。それは、諸君と行動を共にしたいけれども、どうもそう行かないので仕方がない。こういうのをインデペンデントというのです。勿論それは体質上のそういう一種のデマンドじゃない、精神的の――ポジチブな内心のデマンドである。あるいはこれが道徳上に発現して来る場合もありましょう。あるいは芸術上に発現して来る場合もありましょう。精神的になって来ると――そうですね、古臭《ふるくさ》い例を引くようでありますが、坊さんというものは肉食妻帯《にくじきさいたい》をしない主義であります。それを真宗《しんしゅう》の方では、ずっと昔から肉を食った、女房を持っている。これはまあ思想上の大革命でしょう。親鸞上人《しんらんしょうにん》に初めから非常な思想があり、非常な力があり、非常な強い根柢《こんてい》のある思想を持たなければ、あれほどの大改革は出来ない。言葉を換えて言えば親鸞は非常なインデペンデントの人といわなければならぬ。あれだけのことをするには初めからチャンとした、シッカリした根柢がある。そうして自分の執るべき道はそうでなければならぬ、外《ほか》の坊主と歩調を共にしたいけれども、如何《い
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