と寄ってたかってその破裂を料理した始末、これらの段取を、不断から一貫して傍《はた》の人の眼に着く彼女の性格に結びつけて考えると、どうしても無事に納まるはずはなかった。大なり小なり次の波瀾《はらん》が呼び起されずに片がつこうとは、いかに自分の手際に重きをおくお延にも信ぜられなかった。
 だから彼女は驚ろいた。座に着いたお秀が案に相違していつもより愛嬌《あいきょう》の好い挨拶《あいさつ》をした時には、ほとんどわれを疑うくらいに驚ろいた。その疑いをまた少しも後へ繰り越させないように、手抜《てぬか》りなく仕向けて来る相手の態度を眼の前に見た時、お延はむしろ気味が悪くなった。何という変化だろうという驚ろきの後から、どういう意味だろうという不審が湧《わ》いて起った。
 けれども肝心《かんじん》なその意味を、お秀はまたいつまでもお延に説明しようとしなかった。そればかりか、昨日病院で起った不幸な行《ゆ》き違《ちがい》についても、ついに一言《ひとこと》も口を利《き》く様子を見せなかった。
 相手に心得があってわざと際《きわ》どい問題を避けている以上、お延の方からそれを切り出すのは変なものであった。第一好んで痛いところに触れる必要はどこにもなかった。と云って、どこかで区切《くぎり》を付けて、双方さっぱりしておかないと、自分は何のために、今日ここまで足を運んだのか、主意が立たなくなった。しかし和解の形式を通過しないうちに、もう和解の実を挙げている以上、それをとやかく表面へ持ち出すのも馬鹿げていた。
 怜悧《りこう》なお延は弱らせられた。会話が滑《なめ》らかにすべって行けば行くほど、一種の物足りなさが彼女の胸の中に頭を擡《もた》げて来た。しまいに彼女は相手のどこかを突き破って、その内側を覗《のぞ》いて見ようかと思い出した。こんな点にかけると、すこぶる冒険的なところのある彼女は、万一やり損《そく》なった暁《あかつき》に、この場合から起り得る危険を知らないではなかった。けれどもそこには自分の腕に対する相当の自信も伴っていた。
 その上もし機会が許すならば、お秀の胸の格別なある一点に、打診を試ろみたいという希望が、お延の方にはあった。そこを敲《たた》かせて貰《もら》って局部から自然に出る本音《ほんね》を充分に聴《き》く事は、津田と打ち合せを済ました訪問の主意でも何でもなかったけれども、お延自身か
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