よ」とお秀が云い出した。嫂《あによめ》に対して何とか説明しなければならない位地《いち》に追いつめられた彼女は、こう云いながら腹の中でなおの事その嫂を憎《にく》んだ。彼女から見たその時のお延ほど、空々《そらぞら》しいまたずうずうしい女はなかった。
「ええ良人《うち》は強情よ」と答えたお延はすぐ夫の方を向いた。
「あなた本当に強情よ。秀子さんのおっしゃる通りよ。そのくせだけは是非おやめにならないといけませんわ」
「いったい何が強情なんだ」
「そりゃあたしにもよく解《わか》らないけれども」
「何でもかでもお父さんから金を取ろうとするからかい」
「そうね」
「取ろうとも何とも云っていやしないじゃないか」
「そうね。そんな事おっしゃるはずがないわね。またおっしゃったところで効目《ききめ》がなければ仕方がありませんからね」
「じゃどこが強情なんだ」
「どこがってお聴《き》きになっても駄目《だめ》よ。あたしにもよく解らないんですから。だけど、どこかにあるのよ、強情なところが」
「馬鹿」
 馬鹿と云われたお延はかえって心持ち好さそうに微笑した。お秀はたまらなくなった。
「兄さん、あなたなぜあたしの持って来たものを素直《すなお》にお取りにならないんです」
「素直にも義剛《ぎごわ》にも、取るにも取らないにも、お前の方でてんから出さないんじゃないか」
「あなたの方でお取りになるとおっしゃらないから、出せないんです」
「こっちから云えば、お前の方で出さないから取らないんだ」
「しかし取るようにして取って下さらなければ、あたしの方だって厭《いや》ですもの」
「じゃどうすればいいんだ」
「解《わか》ってるじゃありませんか」
 三人はしばらく黙っていた。
 突然津田が云い出した。
「お延お前お秀に詫《あや》まったらどうだ」
 お延は呆《あき》れたように夫を見た。
「なんで」
「お前さえ詫まったら、持って来たものを出すというつもりなんだろう。お秀の料簡《りょうけん》では」
「あたしが詫まるのは何でもないわ。あなたが詫まれとおっしゃるなら、いくらでも詫まるわ。だけど――」
 お延はここで訴えの眼をお秀に向けた。お秀はその後《あと》を遮《さえぎ》った。
「兄さん、あなた何をおっしゃるんです。あたしがいつ嫂《ねえ》さんに詫まって貰《もら》いたいと云いました。そんな言がかりを捏造《ねつぞう》されては、あた
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