が、さほど敬太郎に関係のある訳でもないので、彼はそれなり黙ってしまった。すると母は少しでも談話の途切《とぎ》れるのを自分の過失ででもあるように、すぐ言葉を継《つ》いだ。
「それでも妹婿《いもとむこ》の方は御蔭《おかげ》さまで、何だかだって方々の会社へ首を突っ込んでおりますから、この方はまあ不自由なく暮しておる模様でございますが、手前共や矢来の弟《おとと》などになりますと、云わば、浪人《ろうにん》同様で、昔に比《くら》べたら、尾羽うち枯らさないばかりの体《てい》たらくだって、よく弟ともそう申しては笑うこってございますよ」
敬太郎は何となく自分の身の上を顧《かえり》みて気恥かしい思をした。幸《さいわい》にさきがすらすら喋舌《しゃべ》ってくれるので、こっちに受け答をする文句を考える必要がないのをせめてもの得《とく》として聞き続けた。
「それにね、御承知の通り市蔵がああいう引っ込思案の男だもんでござんすから、私もただ学校を卒業させただけでは、全く心配が抜けませんので、まことに困り切ります。早く気に入った嫁でも貰って、年寄に安心でもさせてくれるようにおしなと申しますと、そう御母さんの都合のいい
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