は百もそれを承知でいた。だから彼と接触するときには、彼から馬鹿にされるような愚《ぐ》をなるべく慎んで外に出さない用心を怠《おこた》らなかった。けれども時々は、つい年長者の傲《おご》る心から、親しみの強い彼を眼下《がんか》に見下《みくだ》して、浅薄と心付《こころづき》ながら、その場限りの無意味にもったいをつけた訓戒などを与える折も無いではなかった。賢《かし》こい彼は僕に恥を掻《か》かせるために、自分の優越を利用するほど、品位を欠いた所作《しょさ》をあえてし得ないのではあるが、僕の方ではその都度《つど》彼に対するこっちの相場が下落して行くような屈辱を感ずるのが例であった。僕はすぐ自分の言葉を訂正しにかかった。
「そりゃ広い世の中だから、敵同志《かたきどうし》の親子もあるだろうし、命を危《あや》め合う夫婦もいないとは限らないさ。しかしまあ一般に云えば、兄弟とか叔父甥とかの名で繋《つな》がっている以上は、繋がっているだけの親しみはどこかにあろうじゃないか。御前は相応の教育もあり、相応の頭もある癖に、何だか妙に一種の僻《ひが》みがあるよ。それが御前の弱点だ。是非直さなくっちゃいけない。傍《はた》
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