雨外套《レインコート》の下に、直《じか》に半袖《はんそで》の薄い襯衣《シャツ》を着て、変な半洋袴《はんズボン》から余った脛《すね》を丸出しにして、黒足袋《くろたび》に俎下駄《まないたげた》を引っかけていた。彼はこの通りと雨外套の下を僕らに示した上、日本へ帰ると服装が自由で貴女《レデー》の前でも気兼《きがね》がなくって好いと云っていた。
一同がぞろぞろ揃《そろ》って道幅の六尺ばかりな汚苦《むさくる》しい漁村に這入《はい》ると、一種不快な臭《におい》がみんなの鼻を撲《う》った。高木は隠袋《ポッケット》から白い手巾《ハンケチ》を出して短かい髭の上を掩《おお》った。叔父は突然そこに立って僕らを見ていた子供に、西の者で南の方から養子に来たものの宅《うち》はどこだと奇体な質問を掛けた。子供は知らないと云った。僕は千代子に何でそんな妙な聞き方をするのかと尋ねた。昨夕《ゆうべ》聞き合せに人をやった家《うち》の主人が云うには、名前は忘れたからこれこれの男と云って探して歩けば分ると教えたからだと千代子が話して聞かした時、僕はこの呑気《のんき》な教え方と、同じく呑気な聞き方を、いかにも余裕なくこせついてい
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