た次の店に移った。そうして瑪瑙《めのう》で刻《ほ》った透明な兎《うさぎ》だの、紫水晶《むらさきずいしょう》でできた角形《かくがた》の印材だの、翡翠《ひすい》の根懸《ねがけ》だの孔雀石《くじゃくせき》の緒締《おじめ》だのの、金の指輪やリンクスと共に、美くしく並んでいる宝石商の硝子窓《ガラスまど》を覗《のぞ》いた。
 敬太郎はこうして店から店を順々に見ながら、つい天下堂の前を通り越して唐木細工《からきざいく》の店先まで来た。その時|後《うしろ》から来た電車が、突然自分の歩いている往来の向う側でとまったので、もしやという心から、筋違《すじかい》に通を横切って細い横町の角にある唐物屋《とうぶつや》の傍《そば》へ近寄ると、そこにも一本の鉄の柱に、先刻《さっき》のと同じような、小川町停留所という文字が白く書いてあった。彼は念のためこの角《かど》に立って、二三台の電車を待ち合わせた。すると最初には青山というのが来た。次には九段新宿というのが来た。が、いずれも万世橋《まんせいばし》の方から真直《まっすぐ》に進んで来るので彼はようやく安心した。これでよもやの懸念《けねん》もなくなったから、そろそろ元の位
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