tかなけりゃ、切るよ、いいか、血が出るぜ」
「痛いがな。そう無茶をしては」
「このくらいな辛抱が出来なくって坊主になれるもんか」
「坊主にはもうなっとるがな」
「まだ一人前《いちにんめえ》じゃねえ。――時にあの泰安さんは、どうして死んだっけな、御小僧さん」
「泰安さんは死にはせんがな」
「死なねえ? はてな。死んだはずだが」
「泰安さんは、その後《のち》発憤して、陸前《りくぜん》の大梅寺《だいばいじ》へ行って、修業三昧《しゅぎょうざんまい》じゃ。今に智識《ちしき》になられよう。結構な事よ」
「何が結構だい。いくら坊主だって、夜逃をして結構な法はあるめえ。御前《おめえ》なんざ、よく気をつけなくっちゃいけねえぜ。とかく、しくじるなあ女だから――女ってえば、あの狂印《きじるし》はやっぱり和尚《おしょう》さんの所へ行くかい」
「狂印《きじるし》と云う女は聞いた事がない」
「通じねえ、味噌擂《みそすり》だ。行くのか、行かねえのか」
「狂印《きじるし》は来んが、志保田の娘さんなら来る」
「いくら、和尚さんの御祈祷《ごきとう》でもあればかりゃ、癒《なお》るめえ。全く先《せん》の旦那が祟《たた》ってる
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