烽ト》へ乗り出している。鏡を懐《ふところ》にした女は、あの岩の上からでも飛んだものだろう。
三脚几《さんきゃくき》に尻《しり》を据《す》えて、面画に入るべき材料を見渡す。松と、笹と、岩と水であるが、さて水はどこでとめてよいか分らぬ。岩の高さが一丈あれば、影も一丈ある。熊笹は、水際でとまらずに、水の中まで茂り込んでいるかと怪《あやし》まるるくらい、鮮《あざ》やかに水底まで写っている。松に至っては空に聳《そび》ゆる高さが、見上げらるるだけ、影もまたすこぶる細長い。眼に写っただけの寸法ではとうてい収《おさま》りがつかない。一層《いっそ》の事、実物をやめて影だけ描くのも一興だろう。水をかいて、水の中の影をかいて、そうして、これが画だと人に見せたら驚ろくだろう。しかしただ驚ろかせるだけではつまらない。なるほど画になっていると驚かせなければつまらない。どう工夫《くふう》をしたものだろうと、一心に池の面《おも》を見詰める。
奇体なもので、影だけ眺《なが》めていてはいっこう画にならん。実物と見比べて工夫がして見たくなる。余は水面から眸《ひとみ》を転じて、そろりそろりと上の方へ視線を移して行く。一丈
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