、りゅう》しているうちに、その美くしい嬢様が、その梵論字を見染《みそ》めて――因果《いんが》と申しますか、どうしてもいっしょになりたいと云うて、泣きました」
「泣きました。ふうん」
「ところが庄屋どのが、聞き入れません。梵論字は聟《むこ》にはならんと云うて。とうとう追い出しました」
「その虚無僧《こもそう》[#ルビの「こもそう」は底本では「こむそう」]をかい」
「はあい。そこで嬢様が、梵論字のあとを追うてここまで来て、――あの向うに見える松の所から、身を投げて、――とうとう、えらい騒ぎになりました。その時何でも一枚の鏡を持っていたとか申し伝えておりますよ。それでこの池を今でも鏡が池と申しまする」
「へええ。じゃ、もう身を投げたものがあるんだね」
「まことに怪《け》しからん事でござんす」
「何代くらい前の事かい。それは」
「なんでもよっぽど昔の事でござんすそうな。それから――これはここ限りの話だが、旦那さん」
「何だい」
「あの志保田の家には、代々《だいだい》気狂《きちがい》が出来ます」
「へええ」
「全く祟《たた》りでござんす。今の嬢様も、近頃は少し変だ云うて、皆が囃《はや》します」
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