》の音の間にこの言葉を聞いた自分は、実際物凄かった。彼女は平生から落ちついた女であった。歇私的里風《ヒステリふう》なところはほとんどなかった。けれども寡言《かげん》な彼女の頬は常に蒼《あお》かった。そうしてどこかの調子で眼の中に意味の強い解すべからざる光が出た。
「姉さんは今夜よっぽどどうかしている。何か昂奮している事でもあるんですか」
自分は彼女の涙を見る事はできなかった。また彼女の泣き声を聞く事もできなかった。けれども今にもそこに至りそうな気がするので、暗い行灯《あんどん》の光を便《たよ》りに、蚊帳《かや》の中を覗《のぞ》いて見た。彼女は赤い蒲団《ふとん》を二枚重ねてその上に縁《ふち》を取った白麻《しろあさ》の掛蒲団を胸の所まで行儀よく掛けていた。自分が暗い灯《ひ》でその姿を覗《のぞ》き込んだ時、彼女は枕を動かして自分の方を見た。
「あなた昂奮昂奮って、よくおっしゃるけれども妾《あたし》ゃあなたよりいくら落ちついてるか解りゃしないわ。いつでも覚悟ができてるんですもの」
自分は何と答うべき言葉も持たなかった。黙って二本目の敷島《しきしま》を暗い灯影《ほかげ》で吸い出した。自分はわ
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