た。暴風雨《しけ》で魚がないと下女が言訳を云ったにかかわらず、われわれの膳《ぜん》の上は明かであった。
「まるで生返ったようね」と嫂が云った。
 すると電灯がまたぱっと消えた。自分は急に箸《はし》を消えたところに留めたぎり、しばらく動かさなかった。
「おやおや」
 下女は大きな声をして朋輩《ほうばい》の名を呼びながら灯火《あかり》を求めた。自分は電気灯がぱっと明るくなった瞬間に嫂《あによめ》が、いつの間にか薄く化粧《けしょう》を施したという艶《なまめ》かしい事実を見て取った。電灯の消えた今、その顔だけが真闇《まっくら》なうちにもとの通り残っているような気がしてならなかった。
「姉さんいつ御粧《おつくり》したんです」
「あら厭《いや》だ真闇になってから、そんな事を云いだして。あなたいつ見たの」
 下女は暗闇《くらやみ》で笑い出した。そうして自分の眼ざとい事を賞《ほ》めた。
「こんな時に白粉《おしろい》まで持って来るのは実に細かいですね、姉さんは」と自分はまた暗闇の中で嫂に云った。
「白粉なんか持って来やしないわ。持って来たのはクリームよ、あなた」と彼女はまた暗闇の中で弁解した。
 自分は
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