《ともしび》を点《つ》けたのが遠くから皮膚をほてらしているようであった。しかし自分はその意味を深くも考えなかった。
 和歌山へ着いた時、二人は電車を降りた。降りて始めて自分は和歌山へ始めて来た事を覚《さと》った。実はこの地を見物する口実の下《もと》に、嫂《あによめ》を連れて来たのだから、形式にもどこか見なければならなかった。
「あらあなたまだ和歌山を知らないの。それでいて妾《あたし》を連れて来るなんて、ずいぶん呑気《のんき》ね」
 嫂は心細そうに四方《あたり》を見廻した。自分も何分かきまりが悪かった。
「俥《くるま》へでも乗って車夫に好い加減な所へ連れて行って貰いましょうか。それともぶらぶら御城の方へでも歩いて行きますか」
「そうね」
 嫂は遠くの空を眺めて、近い自分には眼を注がなかった。空はここも海辺《かいへん》と同じように曇っていた。不規則に濃淡を乱した雲が幾重《いくえ》にも二人の頭の上を蔽《おお》って、日を直下《じか》に受けるよりは蒸し熱かった。その上いつ驟雨《しゅうう》が来るか解らないほどに、空の一部分がすでに黒ずんでいた。その黒ずんだ円《えん》の四方が暈《ぼか》されたように輝
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