は大分違うもんだな」と主人は鈴木君を見上げたり見下ろしたりしている。鈴木君は頭を美麗《きれい》に分けて、英国仕立のトウィードを着て、派手な襟飾《えりかざ》りをして、胸に金鎖りさえピカつかせている体裁、どうしても苦沙弥《くしゃみ》君の旧友とは思えない。
「うん、こんな物までぶら下げなくちゃ、ならんようになってね」と鈴木君はしきりに金鎖りを気にして見せる。
「そりゃ本ものかい」と主人は無作法《ぶさほう》な質問をかける。
「十八金だよ」と鈴木君は笑いながら答えたが「君も大分年を取ったね。たしか小供があるはずだったが一人かい」
「いいや」
「二人?」
「いいや」
「まだあるのか、じゃ三人か」
「うん三人ある。この先|幾人《いくにん》出来るか分らん」
「相変らず気楽な事を云ってるぜ。一番大きいのはいくつになるかね、もうよっぽどだろう」
「うん、いくつか能《よ》く知らんが大方《おおかた》六つか、七つかだろう」
「ハハハ教師は呑気《のんき》でいいな。僕も教員にでもなれば善かった」
「なって見ろ、三日で嫌《いや》になるから」
「そうかな、何だか上品で、気楽で、閑暇《ひま》があって、すきな勉強が出来て、よさそうじゃないか。実業家も悪くもないが我々のうちは駄目だ。実業家になるならずっと上にならなくっちゃいかん。下の方になるとやはりつまらん御世辞を振り撒《ま》いたり、好かん猪口《ちょこ》をいただきに出たり随分|愚《ぐ》なもんだよ」
「僕は実業家は学校時代から大嫌だ。金さえ取れれば何でもする、昔で云えば素町人《すちょうにん》だからな」と実業家を前に控《ひか》えて太平楽を並べる。
「まさか――そうばかりも云えんがね、少しは下品なところもあるのさ、とにかく金《かね》と情死《しんじゅう》をする覚悟でなければやり通せないから――ところがその金と云う奴が曲者《くせもの》で、――今もある実業家の所へ行って聞いて来たんだが、金を作るにも三角術を使わなくちゃいけないと云うのさ――義理をかく[#「かく」に傍点]、人情をかく[#「かく」に傍点]、恥をかく[#「かく」に傍点]これで三角になるそうだ面白いじゃないかアハハハハ」
「誰だそんな馬鹿は」
「馬鹿じゃない、なかなか利口な男なんだよ、実業界でちょっと有名だがね、君知らんかしら、ついこの先の横丁にいるんだが」
「金田か? 何《な》んだあんな奴」
「大変怒って
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