。しかし妻だけはたった一人の例外だと承知して下さい。私は妻には何にも知らせたくないのです。妻が己《おの》れの過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存しておいてやりたいのが私の唯一《ゆいいつ》の希望なのですから、私が死んだ後《あと》でも、妻が生きている以上は、あなた限りに打ち明けられた私の秘密として、すべてを腹の中にしまっておいて下さい。」



底本:「こころ」集英社文庫、集英社
   1991(平成3)年2月25日第1刷
   1995(平成7)年6月14日第10刷
初出:「朝日新聞」
   1914(大正3)年4月20日〜8月11日
※誤植の修正は「漱石全集」岩波書店を参照しました。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:j.utiyama
校正:伊藤時也
1999年7月31日公開
2004年2月6日修正
青空文庫作成ファイル:
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