号外を手にして、思わず妻に殉死だ殉死だといいました。
私は新聞で乃木大将の死ぬ前に書き残して行ったものを読みました。西南戦争《せいなんせんそう》の時敵に旗を奪《と》られて以来、申し訳のために死のう死のうと思って、つい今日《こんにち》まで生きていたという意味の句を見た時、私は思わず指を折って、乃木さんが死ぬ覚悟をしながら生きながらえて来た年月《としつき》を勘定して見ました。西南戦争は明治十年ですから、明治四十五年までには三十五年の距離があります。乃木さんはこの三十五年の間《あいだ》死のう死のうと思って、死ぬ機会を待っていたらしいのです。私はそういう人に取って、生きていた三十五年が苦しいか、また刀を腹へ突き立てた一刹那《いっせつな》が苦しいか、どっちが苦しいだろうと考えました。
それから二、三日して、私はとうとう自殺する決心をしたのです。私に乃木さんの死んだ理由がよく解《わか》らないように、あなたにも私の自殺する訳が明らかに呑《の》み込めないかも知れませんが、もしそうだとすると、それは時勢の推移から来る人間の相違だから仕方がありません。あるいは箇人《こじん》のもって生れた性格の相違とい
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