疑念さえ、どこからか頭の底に這《は》い込んで来たくらいです。けれども大体の上において、私の未来の運命は、これで定められたのだという観念が私のすべてを新たにしました。
 私は午頃《ひるごろ》また茶の間へ出掛けて行って、奥さんに、今朝《けさ》の話をお嬢さんに何時《いつ》通じてくれるつもりかと尋ねました。奥さんは、自分さえ承知していれば、いつ話しても構わなかろうというような事をいうのです。こうなると何だか私よりも相手の方が男みたようなので、私はそれぎり引き込もうとしました。すると奥さんが私を引き留めて、もし早い方が希望ならば、今日でもいい、稽古《けいこ》から帰って来たら、すぐ話そうというのです。私はそうしてもらう方が都合が好《い》いと答えてまた自分の室に帰りました。しかし黙って自分の机の前に坐《すわ》って、二人のこそこそ話を遠くから聞いている私を想像してみると、何だか落ち付いていられないような気もするのです。私はとうとう帽子を被《かぶ》って表へ出ました。そうしてまた坂の下でお嬢さんに行き合いました。何にも知らないお嬢さんは私を見て驚いたらしかったのです。私が帽子を脱《と》って「今お帰り」と尋
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