た。
 Kはやがて開けた襖をぴたりと立て切りました。私の室はすぐ元の暗闇《くらやみ》に帰りました。私はその暗闇より静かな夢を見るべくまた眼を閉じました。私はそれぎり何も知りません。しかし翌朝《よくあさ》になって、昨夕《ゆうべ》の事を考えてみると、何だか不思議でした。私はことによると、すべてが夢ではないかと思いました。それで飯《めし》を食う時、Kに聞きました。Kはたしかに襖を開けて私の名を呼んだといいます。なぜそんな事をしたのかと尋ねると、別に判然《はっきり》した返事もしません。調子の抜けた頃になって、近頃は熟睡ができるのかとかえって向うから私に問うのです。私は何だか変に感じました。
 その日ちょうど同じ時間に講義の始まる時間割になっていたので、二人はやがていっしょに宅《うち》を出ました。今朝《けさ》から昨夕の事が気に掛《かか》っている私は、途中でまたKを追窮《ついきゅう》しました。けれどもKはやはり私を満足させるような答えをしません。私はあの事件について何か話すつもりではなかったのかと念を押してみました。Kはそうではないと強い調子でいい切りました。昨日《きのう》上野で「その話はもう止《
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