たつおかちょう》から池《いけ》の端《はた》へ出て、上野《うえの》の公園の中へ入りました。その時彼は例の事件について、突然向うから口を切りました。前後の様子を綜合《そうごう》して考えると、Kはそのために私をわざわざ散歩に引《ひ》っ張《ぱ》り出《だ》したらしいのです。けれども彼の態度はまだ実際的の方面へ向ってちっとも進んでいませんでした。彼は私に向って、ただ漠然と、どう思うというのです。どう思うというのは、そうした恋愛の淵《ふち》に陥《おちい》った彼を、どんな眼で私が眺《なが》めるかという質問なのです。一言《いちごん》でいうと、彼は現在の自分について、私の批判を求めたいようなのです。そこに私は彼の平生《へいぜい》と異なる点を確かに認める事ができたと思いました。たびたび繰り返すようですが、彼の天性は他《ひと》の思わくを憚《はば》かるほど弱くでき上ってはいなかったのです。こうと信じたら一人でどんどん進んで行くだけの度胸もあり勇気もある男なのです。養家《ようか》事件でその特色を強く胸の裏《うち》に彫《ほ》り付けられた私が、これは様子が違うと明らかに意識したのは当然の結果なのです。
 私がKに向っ
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