ものでしょう、立派な伽藍《がらん》でした。Kはその寺に行って住持《じゅうじ》に会ってみるといい出しました。実をいうと、我々はずいぶん変な服装《なり》をしていたのです。ことにKは風のために帽子を海に吹き飛ばされた結果、菅笠《すげがさ》を買って被《かぶ》っていました。着物は固《もと》より双方とも垢《あか》じみた上に汗で臭《くさ》くなっていました。私は坊さんなどに会うのは止《よ》そうといいました。Kは強情《ごうじょう》だから聞きません。厭《いや》なら私だけ外に待っていろというのです。私は仕方がないからいっしょに玄関にかかりましたが、心のうちではきっと断られるに違いないと思っていました。ところが坊さんというものは案外|丁寧《ていねい》なもので、広い立派な座敷へ私たちを通して、すぐ会ってくれました。その時分の私はKと大分《だいぶ》考えが違っていましたから、坊さんとKの談話にそれほど耳を傾ける気も起りませんでしたが、Kはしきりに日蓮の事を聞いていたようです。日蓮は草日蓮《そうにちれん》といわれるくらいで、草書《そうしょ》が大変上手であったと坊さんがいった時、字の拙《まず》いKは、何だ下らないという
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