は海のものとも山のものとも見分《みわ》けの付かないような返事ばかりするのです。しかもその返事は要領を得ないくせに、極めて簡単でした。彼は二人の女に関してよりも、専攻の学科の方に多くの注意を払っているように見えました。もっともそれは二学年目の試験が目の前に逼《せま》っている頃《ころ》でしたから、普通の人間の立場から見て、彼の方が学生らしい学生だったのでしょう。その上彼はシュエデンボルグがどうだとかこうだとかいって、無学な私を驚かせました。
我々が首尾よく試験を済ましました時、二人とももう後《あと》一年だといって奥さんは喜んでくれました。そういう奥さんの唯一《ゆいいつ》の誇《ほこ》りとも見られるお嬢さんの卒業も、間もなく来る順になっていたのです。Kは私に向って、女というものは何にも知らないで学校を出るのだといいました。Kはお嬢さんが学問以外に稽古《けいこ》している縫針《ぬいはり》だの琴だの活花《いけばな》だのを、まるで眼中に置いていないようでした。私は彼の迂闊《うかつ》を笑ってやりました。そうして女の価値はそんな所にあるものでないという昔の議論をまた彼の前で繰り返しました。彼は別段|反駁
前へ
次へ
全371ページ中267ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング