と尋ねたら、彼は親指で一つ二つと勘定する真似《まね》をして見せました。彼はこうして日に何遍《なんべん》も珠数の輪を勘定するらしかったのです。ただしその意味は私には解《わか》りません。円い輪になっているものを一粒ずつ数えてゆけば、どこまで数えていっても終局はありません。Kはどんな所でどんな心持がして、爪繰《つまぐ》る手を留めたでしょう。詰《つま》らない事ですが、私はよくそれを思うのです。
 私はまた彼の室に聖書を見ました。私はそれまでにお経《きょう》の名を度々《たびたび》彼の口から聞いた覚えがありますが、基督教《キリストきょう》については、問われた事も答えられた例《ためし》もなかったのですから、ちょっと驚きました。私はその理由《わけ》を訊《たず》ねずにはいられませんでした。Kは理由はないといいました。これほど人の有難《ありがた》がる書物なら読んでみるのが当り前だろうともいいました。その上彼は機会があったら、『コーラン』も読んでみるつもりだといいました。彼はモハメッドと剣という言葉に大いなる興味をもっているようでした。
 二年目の夏に彼は国から催促を受けてようやく帰りました。帰っても専門の
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