も、東京へ着いてからは、すぐ同じ下宿に入りました。その時分は一つ室《へや》によく二人も三人も机を並べて寝起《ねお》きしたものです。Kと私も二人で同じ間《ま》にいました。山で生捕《いけど》られた動物が、檻《おり》の中で抱き合いながら、外を睨《にら》めるようなものでしたろう。二人は東京と東京の人を畏《おそ》れました。それでいて六畳の間《ま》の中では、天下を睥睨《へいげい》するような事をいっていたのです。
しかし我々は真面目《まじめ》でした。我々は実際偉くなるつもりでいたのです。ことにKは強かったのです。寺に生れた彼は、常に精進《しょうじん》という言葉を使いました。そうして彼の行為動作は悉《ことごと》くこの精進の一語で形容されるように、私には見えたのです。私は心のうちで常にKを畏敬《いけい》していました。
Kは中学にいた頃から、宗教とか哲学とかいうむずかしい問題で、私を困らせました。これは彼の父の感化なのか、または自分の生れた家、すなわち寺という一種特別な建物に属する空気の影響なのか、解《わか》りません。ともかくも彼は普通の坊さんよりは遥《はる》かに坊さんらしい性格をもっていたように見受
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