まで奥さんを誤解していたのではなかろうかという気になりました。奥さんの私に対する矛盾した態度が、どっちも偽りではないのだろうと考え直して来たのです。その上、それが互《たが》い違《ちが》いに奥さんの心を支配するのでなくって、いつでも両方が同時に奥さんの胸に存在しているのだと思うようになったのです。つまり奥さんができるだけお嬢さんを私に接近させようとしていながら、同時に私に警戒を加えているのは矛盾のようだけれども、その警戒を加える時に、片方の態度を忘れるのでも翻すのでも何でもなく、やはり依然として二人を接近させたがっていたのだと観察したのです。ただ自分が正当と認める程度以上に、二人が密着するのを忌《い》むのだと解釈したのです。お嬢さんに対して、肉の方面から近づく念の萌《きざ》さなかった私は、その時|入《い》らぬ心配だと思いました。しかし奥さんを悪く思う気はそれからなくなりました。

     十五

「私は奥さんの態度を色々|綜合《そうごう》して見て、私がここの家《うち》で充分信用されている事を確かめました。しかもその信用は初対面の時からあったのだという証拠さえ発見しました。他《ひと》を疑
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