くらい、恥ずかしがらないのです。あまり長くなるので、茶の間から母に呼ばれても、「はい」と返事をするだけで、容易に腰を上げない事さえありました。それでいてお嬢さんは決して子供ではなかったのです。私の眼にはよくそれが解《わか》っていました。よく解るように振舞って見せる痕迹《こんせき》さえ明らかでした。

     十四

「私はお嬢さんの立ったあとで、ほっと一息《ひといき》するのです。それと同時に、物足りないようなまた済まないような気持になるのです。私は女らしかったのかも知れません。今の青年のあなたがたから見たらなおそう見えるでしょう。しかしその頃《ころ》の私たちは大抵そんなものだったのです。
 奥さんは滅多《めった》に外出した事がありませんでした。たまに宅《うち》を留守にする時でも、お嬢さんと私を二人ぎり残して行くような事はなかったのです。それがまた偶然なのか、故意なのか、私には解らないのです。私の口からいうのは変ですが、奥さんの様子を能《よ》く観察していると、何だか自分の娘と私とを接近させたがっているらしくも見えるのです。それでいて、或《あ》る場合には、私に対して暗《あん》に警戒すると
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