は「あなたは自分で気が付かないから、そうおっしゃるんです」と真面目《まじめ》に説明してくれました。奥さんは始め私のような書生を宅《うち》へ置くつもりではなかったらしいのです。どこかの役所へ勤める人か何かに坐敷《ざしき》を貸す料簡《りょうけん》で、近所のものに周旋を頼んでいたらしいのです。俸給が豊《ゆた》かでなくって、やむをえず素人屋《しろうとや》に下宿するくらいの人だからという考えが、それで前かたから奥さんの頭のどこかにはいっていたのでしょう。奥さんは自分の胸に描《えが》いたその想像のお客と私とを比較して、こっちの方を鷹揚だといって褒《ほ》めるのです。なるほどそんな切り詰めた生活をする人に比べたら、私は金銭にかけて、鷹揚だったかも知れません。しかしそれは気性《きしょう》の問題ではありませんから、私の内生活に取ってほとんど関係のないのと一般でした。奥さんはまた女だけにそれを私の全体に推《お》し広げて、同じ言葉を応用しようと力《つと》めるのです。
十三
「奥さんのこの態度が自然私の気分に影響して来ました。しばらくするうちに、私の眼はもとほどきょろ付かなくなりました。自分の心が
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