『煤煙』の序
夏目漱石
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)「煤煙《ばいえん》」が朝日新聞に出て
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)安全な部分|丈《だけ》を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ケレン[#「ケレン」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ひし/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
「煤煙《ばいえん》」が朝日新聞に出て有名になつてから後《のち》間もなくの話であるが、著者は夫《それ》を単行本として再び世間に公けにする計画をした。書肆《しよし》も無論賛成で既に印刷に回して活字に組み込まうと迄《まで》した位である。所が其頃《そのころ》内閣が変つて、著書の検閲が急に八釜敷《やかまし》くなつたので、書肆は万一を慮《おもんぱか》つて、直接に警保局長の意見を確めに行つた。すると警保局長は全然出版に反対の意を仄《ほの》めかした。もし押切つて発売に至る迄の手続をしやうものなら、必ず発売禁止になるものと解釈して、書肆は引下つた。著者は已《やむ》を得ず煤煙の切抜帳を
次へ
全6ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング