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・手と手
妙な握手[#「妙な握手」に傍点]
・夾竹桃
・泰山木
・藪柑子
・かなめの芽
――
――
・ひよどり
・頬白
・きつつき
・ひたき
・みそさゞい
――
――
[#ここで字下げ終わり]
六月十五日[#「六月十五日」に二重傍線] 雨。 六月十六日[#「六月十六日」に二重傍線] 曇。
苦しい、苦しい、苦しい、……Nさんを訪ねる、酒!
六月十七日[#「六月十七日」に二重傍線] 雨。
Kから返事が来た、涙なしでは読まれない。
払へるだけ払ふ、そしてほどよく飲んで酔うて、そしてまたW店の厄介になつた。
六月十八日[#「六月十八日」に二重傍線] 雨、のち晴。
労れてはゐるけれど、樹明君に頼まれて事務を手伝ふ、そして共に宿直室に泊る。
六月十九日[#「六月十九日」に二重傍線] 曇。
今日も手伝ふ、午後帰庵してほつとした。
六月廿日[#「六月廿日」に二重傍線] 雨。
死ぬにも死ねないみじめさ[#「死ぬにも死ねないみじめさ」に傍点]である。
六月廿一日[#「六月廿一日」に二重傍線] 雨。
無言行をつゞける。
六月廿二日[#「六月廿二日」に二重傍線] 雨、夏至。
おなじく。――
いかに生くべきか[#「いかに生くべきか」に傍点]、かうしてゐて私はどうするのか、どうなるのか、考へてゐたところで、どうにもならない私ではないか。
自己の純化[#「自己の純化」に傍点]、生活の正しさ[#「生活の正しさ」に傍点]、建て直せ[#「建て直せ」に傍点]、建て直せ[#「建て直せ」に傍点]!
時代の認識[#「時代の認識」に傍点]、人生の真実[#「人生の真実」に傍点]、私は再出発する外ない[#「私は再出発する外ない」に傍点]!
六月廿三日[#「六月廿三日」に二重傍線] 曇。
窮すれば通ず、といふ、やうやく転一歩した、さらに転一歩しよう、しなければならない。
五日ぶりに外出、W店へ筍を持つていつてあげる、飲まないで戻つたのは上出来だつた。
文字通り一文なし、それでも落ちついてをれる。
一切放下着[#「一切放下着」に傍点]、水の湧くやうに、溢れるやうに流れるやうに。
六月廿四日[#「六月廿四日」に二重傍線] 雨、雨、雨。
食べるものがない、何もかもなくなつた、ぢつとして雨を観てゐた。……
今日も郵便は来ないのか、今日も
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