片隅の幸福
種田山頭火
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【テキスト中に現れる記号について】
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大の字に寝て涼しさよ淋しさよ
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一茶の句である。いつごろの作であるかは、手もとに参考書が一冊もないから解らないけれど、多分放浪時代の句であろうと思う。とにかくそのつもりで筆をすすめてゆく。――
一茶は不幸な人間であった。幼にして慈母を失い、継母に虐められ、東漂西泊するより外はなかった。彼は幸か不幸か俳人であった。恐らくは俳句を作るより外には能力のない彼であったろう。彼は句を作った。悲しみも歓びも憤りも、すべてを俳句として表現した。彼の句が人間臭ふんぷん[#「ふんぷん」に傍点]たる所以である。煩悩無尽、煩悩そのものが彼の句となったのである。
しかし、この句には彼独特の反感と皮肉がなくて、のんびり[#「のんびり」に傍点]としてそしてしんみり[#「しんみり」に傍点]としたものがある。
大の字に寝て涼しさよ[#「大の字に寝て涼しさよ」に傍点]――はさすがに一茶的である。いつもの一
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