「真理は平凡なり」に傍点]、例へば、私たちはいつでも真実[#「真実」に傍点]でなければならない、真実に生きなければならない。
問題は真実の内容[#「真実の内容」に傍点]にある、真実であることに間違はないが、何が真実であるか、現代に即して自我の発露はどうすれば真実であるか。
いかに考へ、いかに行ふべきであるか。
いひかへると、真実の表現は何であるか[#「真実の表現は何であるか」に傍点]。
□托鉢して、そして仏弟子として修行しないならば、それは一種の詐偽取財[#「詐偽取財」に傍点]だ。
行乞して、物資を費消するならば、それも一種の搾取[#「搾取」に傍点]だ。
仏家として仏道に精進しないならば、背任行為[#「背任行為」に傍点]ではないか!
[#ここで字下げ終わり]
十月十一日[#「十月十一日」に二重傍線] 晴、空の色がはつきりしないけれど。
沈潜、自己を掘り下げることが今の私の仕事だ。
Jさんの子供が柿もぎに来た、今年はこゝの柿はあまりなつてゐない、よそのはたくさんなつてゐるのに。
今日は誰か来さうなものである、来てくれるとよいな、と思つてゐるところへ樹明君が来た、よかつた、よかつた、安心した(私の予感があたらないでもなかつたらしい、先日来、酒のために悩まされたといふ)、御飯を食べてから、君は沙魚釣に、私はポストへ。
今日も品行方正!
午後、T酒店の主人が空罐拾ひに来て閑談しばらく、先日の新聞記事が利いてるらしい。
秋を味ふ、眼で柿を食べる[#「眼で柿を食べる」に傍点]。……
がちやがちやがまだ鳴いてゐる、鈴虫があちらで一匹、こちらで一匹、おとなしくさびしく鳴く。
どうも寝苦しい、やつと寝つくと悪夢におそはれる、詰らないことである。
過去は過去、未来は未来、後悔するな、遅疑するな、現在を十分に生きろ[#「現在を十分に生きろ」に傍点]!
第一山頭火、第二山頭火、第三山頭火。――
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「秋風日記」
○播くもの――宮重大根、聖護院大根、ころげ蕪、新菊、ほうれん草(ワケギを植ゑる)。
○秋を味ふ――酒と松茸。
○風、月、草、虫。――
○蚯蚓つぶやいて曰く――俺の寝床の平和をみだすのは誰だ!
こほろぎはさゝやく――こゝはわたしの産褥ですよ。
雑草曰く――もうぢき枯れるんだ。
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(十日)
・にぎや
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