1=X[#ここで横組み終わり] 人生とはかういふものか [#ここから横組み]1−1=0[#改行]1×1=X[#ここで横組み終わり]
△言葉の味
貧乏、銭なし、無一文、等々。
△後悔しない私[#「後悔しない私」に傍点]になりたい。
[#ここで字下げ終わり]
九月廿八日[#「九月廿八日」に二重傍線] 晴。
樹明君悄然として出勤する、人間樹明のしほらしさは見るに忍びなかつた。
朝酒! 幸か不幸か、どちらでも構はない。
嫌な手紙を書いた、書きたくないけれど書かなければならなかつた、それを持つて駅のポストへ出かけて、そしてふら/\飲み歩いた(といつてもフトコロはヒンヂヤクだつた)、ぼろ/\になつた、とう/\また畜舎の御厄介になつた。……
九月廿九日[#「九月廿九日」に二重傍線] 秋晴。
早朝帰庵。
その日が来た[#「その日が来た」に傍点]、と思ふ。
NさんがFさんと同道して来庵、私のことが記事として載つてゐる福日紙を持つて(先日のMさんが書いたのだ)、同道して散歩、たいへん労れて戻る。
魚眠洞君の手紙はうれしかつた。
Kから新婚写真を送つてきた、それはもとより私を喜ばしたが、同時に私を憂欝にした(一昨日の結婚挨拶状と同様に)、親として父として人間として、私は屑の屑、下々の下だ!
昨日も今日も酒があり肴がある。
月のよろしさ。
いつまでも睡れなかつた。
[#ここから1字下げ]
芭蕉……感傷
富士川の渡。
市振の宿。
蕪村……貧乏
悪妻。
一茶……執着
大福帳。
[#ここで字下げ終わり]
九月三十日[#「九月三十日」に二重傍線] 晴――曇。
仲秋無月。
肌寒く百舌鳥鋭し。
沈静、読書、観賞[#「賞」に「マヽ」の注記]。――
昼食前に樹明君が来て、山口へ出張するから同伴しようといふ、一も二もなく出かける。
湯田温泉はいつでもうれしい、あてもなく歩きまはつて句を拾ふ。
そしていつしよに帰るべくバスに乗つたが、私だけはいつもの癖でどろ/\どろ/\。……
[#ここから4字下げ]
Kへの手紙
(父と子との間)
[#ここで字下げ終わり]
十月一日[#「十月一日」に二重傍線] 曇。
今夜も無月か、惜しいなあ。
夜明け近くなつて帰つて来た。……
樹明君神妙に早起して出勤、昨夜の君はいつもと違つてよかつた。……
身心すぐれず、宿酔の気味、罰だ。……
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