むこと。
[#ここで字下げ終わり]
九月廿四日[#「九月廿四日」に二重傍線] 秋晴。
弱者の悪、痴人の醜を痛感する。
思索、批判、統制が足らない、厚顔無恥、そして無能無力だ!
終日怏々。
愛想が尽きたか! 未練はないか!
甘えるなかれ[#「甘えるなかれ」に傍点]、甘やかすなかれ[#「甘やかすなかれ」に傍点]。
濁貧[#「濁貧」に傍点]! 矛盾地獄[#「矛盾地獄」に傍点]! 孤独餓鬼[#「孤独餓鬼」に傍点]!
流れるままに流れろ[#「流れるままに流れろ」に傍点]、なるやうになれ[#「なるやうになれ」に傍点]。
空は高い、私は弱い!
死ぬるまで生きてをれ[#「死ぬるまで生きてをれ」に傍点]!
現実の夢か、夢の現実か。
苦悩は踊る[#「苦悩は踊る」に傍点]!
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
△反省[#「反省」に傍点]、それは弱者の唯一の武器だ。
△太陽を仰いで孤独を味ふ。
△愚人、悪人、小人、狂人、――私はそのいづれぞ。
私は私の愚[#「私の愚」に傍点]を守らう、守りたい。
△疣[#「疣」に傍点]、瘤[#「瘤」に傍点]、癌[#「癌」に傍点]。
どうか社会の疣でとどまりたい、瘤になつては困る、癌にはなれまい。
[#ここで字下げ終わり]
九月廿五日[#「九月廿五日」に二重傍線] 晴――曇。
身心だいぶ落ちつく。
わがこゝろ水の如かれ、わがこゝろ空の如かれ。
午前、大毎のMさんが写真師を連れて来訪、私と庵とを写した、私といふ人間はつまらないが、萩にすすきの草屋はつまらなくはない。
庵中独坐。
曼珠沙華の花さかり、とても美しいが、その妖艶は強すぎる。
悔恨、更生、精進。……
さびしけりやうたへ[#「さびしけりやうたへ」に傍点]。
夜更けて、樹明君が酔つぱらつて転げこんだ、そして寝てしまつた、酔態あさましいものであつたが、人事ぢやない、それはまた私の姿でもあるのだ。
頭部に腫物が出来て気分がすぐれない、しかし軽い疾病は現在の私にはむしろうれしいものだ。
落ちついて睡れなかつた。
夜明けの雨となつた。
[#ここから1字下げ]
生死も真実、煩悩も真実、苦難も真実、弱さも醜さも愚かさも真実だ。
生々死々、去々来々。
矛盾そのままの調和[#「矛盾そのままの調和」に傍点]、それが本当である、人生も自然のやうに。
観照自得の境地。
割り切れない、割り切らうとあせらな
前へ
次へ
全69ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング