んを訪ね、それからまた飲んで歩いた、御苦労々々々。
八月廿五日[#「八月廿五日」に二重傍線] 晴。
昨日の今日の私で朗らかだ、愉快々々。
身心整理[#「身心整理」に傍点]!
秋蝉(?)が鳴く、法師蝉とは別な声。
アルコールなし、おとなしくしてゐた、句なし。
夕方、Kさん来訪、水瓜を持つて来て下さつた。
裏山の観音堂はお祭とかで、近隣の人々が集つて賑やかだ。
前の小父さんが草を刈つてくれた、一挙両得。
八月廿六日[#「八月廿六日」に二重傍線] 曇――雨。
秋だ、風も雨も、私の身心もまた。
落ちついて読書。
午後ひよつこり黎君来訪、お土産として汽車辨当はうれしかつた、いつしよに街へ出かけて焼酎を買つて来た(蚊捕線香を買つて貰つた)、焼酎も悪くないな、心許した友達とチビリ/\やるには。――
夕方別れる、見送は許して貰ふ、汽車に間にあへばよいが、と案じてゐるところへ六時のサイレン、さつそく後を追うて駅まで行つたが見つからない、すぐ引返して寝た、よく睡れた。
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今日も前の小父さんが草を刈つてくれたのは有難かつたが、咲きそめた萩まで刈つてくれたには閉口した、活けることをも遠慮して、毎日毎日咲くのを眺めてゐたのに、……これが有難迷惑といふのだらうか、刈りとられた萩の枝を見ては微苦笑するより外なかつた。
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八月廿七日[#「八月廿七日」に二重傍線] 曇。
夢の中で執着深い自分[#「執着深い自分」に傍点]を見出した。
山から木や草を戴いて活ける。
飲むか読むか、或は歩くか寝るか。……
idle dreamer は一匹の蝿にもみだされる。
厄日近い天候、雲の色も風の音も何となく穏かでないものがあつた。
早寝、ランプもともさないで、とりとめもない事を考へつゞけてゐると、Nさんが来訪された、しばらく漫談。
くつわ虫が水の流れるやうに鳴く、すぐそこまで来て鳴く、座敷の中へとびこんで鳴く。……
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或る自殺[#「或る自殺」に白三角傍点](連作)
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八月廿八日[#「八月廿八日」に二重傍線] 晴、とかく曇りがち。
露草のうつくしさを机上にうつす、何と可憐な花だらう。
うらさびしさ、ものかなしさ、そして退屈!
つれ/″\なるまゝに徒然草を読む。
早く夕飯を食べて、新開作のNさんを訪ねるつも
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