である。
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○眼が二つ、耳が二つ、手が二本、足が二本。
口は一つ。
ありがたし、ありがたし。
○光、熱。
太陽。
水。
そして我。
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十二月十二日[#「十二月十二日」に二重傍線] 晴、時々曇る。
夜来の雨がさらりと霽れて、枯草がいよ/\美しい、そしてまた時々曇つて竹の葉がこゝろよいしらべを奏でる。……
身心沈静、連作「生魚を焼[#「生魚を焼」に白三角傍点]く」に苦心する、この苦心は愉快な苦心[#「愉快な苦心」に傍点]である。
枯草の奥で、まだ啼く虫がゐる。……
澄太君から地下の水[#「地下の水」に傍点]を四冊送つて来た、先日懇請したのであるが、それにしても、君の正しい温情[#「正しい温情」に傍点]が今更のやうに有難い。
其中有閑無酒[#「其中有閑無酒」に傍点]、有無自在[#「有無自在」に傍点]、――こんなことを考へたりしてゐるうちに午前が過ぎた。
午後、石油と醤油とを仕入れるために(といへば大袈裟だが、嚢中わづかに二十六銭しかない)出かけようとしてゐるところへ、Nさん来訪、ひきかへしてしばらく話して、それから同道して街の中へ、――飲んだ、飲んだ、Y屋、H食堂、Mカフヱー、等々、――別れてから、私はF屋で一休みして、入浴して、そしてどうやらかうやら戻つて来て、ぐつすり寝た、近来の熟睡だつた。
私としては少なからぬ浪費だつたけれど、五日ぶりの酒、十四日目の泥酔だから許して貰はう!
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□魚屋は魚臭い[#「魚屋は魚臭い」に傍点]、彼の肉体がさうであるばかりでなく、或は彼の精神までもさうであるかも知れない。
よい事でもあり、わるい事でもある、とかく世の中はかうしたものだ。
多くの事は楯の両面に過ぎない。
□野菜美[#「野菜美」に傍点]。
芸術作品にもさういふ美がありたい。
野菜を観る態度――
実用的価値。
芸術的価値[#「芸術的価値」に傍点](私の立場はこれだ)。
□紙鳶揚げの追憶[#「紙鳶揚げの追憶」に傍点]。――
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十二月十三日[#「十二月十三日」に二重傍線] 晴――曇。
天地晴朗、身心清澄なり。
昨日の今日[#「昨日の今日」に傍点]にして、さてもしづかな。
小春うらゝかなり、野山を逍遙遊すべし。
米がある、炭がある、――幸
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