とても好いお天気、ぢつとしてはゐられないので出てあるく。
米は買へないから(一升三十二銭)食パンを買ふ(一斤十四銭)、そして行乞はしないのだ、こゝにも私のワガママがあるけれど、それが私のウマレツキだから、詮方もない。
今日は油虫を二度とも殺しそこなつた、かうまで油虫が憎いとは情なくなる。
Nさん来庵、恋愛談を聞かされる、かういふ話も時々は悪くない(度々では困るけれど!)。
やつと番茶が買へたので、それをすゝりながら話しつゞけた。
食パンが近来飲みすぎ食べすぎの胃腸をとゝのへてくれるとは。……
今夜は樹明君宿直なので、六時のサイレンが鳴つてから訪ねる、いつものやうに御馳走になる、思はず飲みすぎて酔つぱらつた、まつすぐに戻ればよいのに横道にそれてしまつた、戻ることは戻つたけれど、愚劣な自分を持てあました!
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其中漫筆
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酔中戯作一首
あなた ドウテイ
わたくし シヨヂヨよ
月があかるい虫のこゑ
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其中漫筆
□私俳句[#「私俳句」に傍点]とは――
□リアリズム精神
自由、流動、気魂[#「魂」に「マヽ」の注記]。
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十月九日[#「十月九日」に二重傍線] 曇、寒い。
朝焼がうつくしかつた。
昨夜の自分を反省して、仏前にお詑びした。……
しつかりしろ山頭火! あんまり下らないぞ!
煩悩無尽誓願断。
自覚すれば、醜悪にたへないやうな自分を見出すことはあまりにあさましい、自分のよさ[#「自分のよさ」に傍点]をも自覚しなければ嘘だ(人には誰でもよさ[#「よさ」に傍点]がある、あらなければならない)。
曇つて風が吹く、まさに秋風だ。
断食(絶食とは意味違ふ)と読書と思索。
――同一の過失を繰り返すことが情ない、酔はない時はしないこと――したくないことを酔中敢てするから嫌になる、自己統制[#「自己統制」に傍点]を[#「嫌になる、自己統制[#「自己統制」に傍点]を」は底本では「嫌になる、自己統[#「、自己統」に傍点]制を」]失ふのである、酒に即して自己を批判すれば、酒を飲んでゐるうちに酒に飲まれるのが悲しいのである。――
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其中漫筆
┌自己の生活認識
└社会の現実認識
┌知識
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