も行けない(それでもヤキモキしなくなつたゞけは感心)、それにしても胃袋よ、お前はたつしやでふとくなつたね!
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墓がならびそうしてそばのはな
大空たゞしく高圧線の列
家がとぎれてだん/\ばたけそばばたけ
・刈田はれ/″\と案山子である
□
・貧乏のどんぞこで百舌鳥がなく
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(これは私自身をうたうたのではない、けふ歩いてゐるうちに、ある貧家を見た時の実感である、しかし、それがその時の私を表現してゐないといふのではない、いや、私自身を表現してはゐようが、自己の直接表現ではない)
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□
・明けてくる熟柿おちる
茶の木が実をもつてゐる莟つけてゐる
[#ここで字下げ終わり]
(『捨てきれないもの』ありやなしや、いへいへ)
十月八日
けさも早かつた、朝が待遠かつた、もう火鉢が恋ひしい。
だいぶ長く乞食をしたので、ちよい/\乞食根性[#「乞食根性」に傍点]が出てきて困る、慎其独[#「慎其独」に傍点]、恥づかしい。
土を運ぶ、蚯蚓の家[#「蚯蚓の家」に傍点]を破壊した。
よいたより、うれしいたより、ありがたいたより。
街へ出かけた、いろ/\の買物、そしてとう/\またわや[#「わや」に傍点]になつた、Tさんの店で、Kさんの店で。
買物をさげてかへる、樹明兄が山口からの帰途を立寄つた、酒と魚とを持つて。
酔うて寝てゐた、樹明兄が敷いてくれた寝床のなかに! ぐつすり寝た。
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・隣も咳入つてゐる柿落葉
ひとり住めば木の葉ちるばかり
住みなれて茶の花さいた
・みほとけのかげわたしのかげの夜をまもる
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┌雨ふるふるさとは――┐
│灯かげ日かげ―― │
└ 日かげ二句 ┘
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我昔所造諸惑[#「惑」に「マヽ」の注記]業
皆由無始貪瞋癡
従身口意之所生
一切我今皆懺悔
衆生無辺誓願度
煩悩無尽誓願断
法門無量誓願学
仏道無上誓願成
自帰依仏 当願衆生 体解大道 発無上心
自帰依法 当願衆生 深入経蔵 智慧如海
自帰依僧 当願衆生 統理大衆 一切無礙
[#ここで字下げ終わり]
十月九日
晴、昨日の今日だから身心がすぐれない、朝寝して残酒残肴を片付けてゐたら、六時のサイレンが鳴りだした。
即今の這是[#「即今の這是」に傍点
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