ひろげて、たべてもたべてもたべきれない。大根は根よりも葉が出来て、これでは大根という代りに大葉とよびたいほどです。菜は間引いてからぐんぐん伸びた。それを洗って干して漬ける。ひとりしみじみ噛みしめていると、ついほろり[#「ほろり」に傍点]とする。このほろり[#「ほろり」に傍点]が解りますか。
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たべきれないちしやの葉が雨をためてゐる
けさはけさのほうれんさうのおしたし
霜の大根ぬいてきてお汁ができた
[#ここで字下げ終わり]
こんな句がいくらでも出来ます。畑作よりも句作の方がまだ上手だという評判です。
会費について二三照会せられた方がありますから、ざっくばらんにここへ書き添えて置きます。あれはまず米一升というところで、二十五銭としましたが、それに拘泥するには及びません。それより多くても、また少くてもかまいません(タダでは困りますけれど)。私の生活は伸縮自在、化方に通じています。金があればあるように、なければないようにやってゆきます。
急にお寒くなりました。夜更けて物思いにふけっていると、裏の畑で狐が鳴きます。狐もさびしいのでしょう。
諸兄の平安を祈ります。(一、一六、夜)
[#地付き](「三八九」第五集)
底本:「山頭火随筆集」講談社文芸文庫、講談社
2002(平成14)年7月10日第1刷発行
2007(平成19)年2月5日第9刷発行
初出:「「三八九」第五集」
1933(昭和8)年1月20日発行
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2008年5月19日作成
青空文庫作成ファイル:
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