第六感に到つて、多少話せる。
朝寒夜寒、山の谷の宿はうすら寒い、もう借衣ではいけないらしい、どなたか、綿入一枚寄附してくだされ、ハイカシコマリマシタ、呵々。
これは行乞ヱピソードの一つで――嘘を教へる、しかも母が子に嘘を教へる、――さういふ微苦笑劇の一シーンに時々出くわす――今日もさういふことがあつた、――御免、お御免、留守、留守と子供がいふ、子供はさういふけれど母親はゐるのだ、ゐて知らない顔をしてゐるのだ、――子供は正直にいふ、お母さんが留守だといへといつたといふ――多分、いや間違ひなく、彼女は主婦の友か婦女界の愛読者だらう、そして主婦の友乃至婦女界の実現者ではないのだらう。
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・いちにち雨ふり一隅を守つてゐた(木賃宿生活)
 あんたのことを考へつゞけて歩きつゞけて
・大空の下にして御飯のひかり
・貧しう住んでこれだけの菊を咲かせてゐる(改作)
 阿蘇がなつかしいりんだうの花[#「の花」に「(ひらく)」の注記]
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人生の幸福は健康であるが、健康はよき食慾とよき睡眠[#「よき食慾とよき睡眠」に傍点]との賜物である、私はよき――むしろ、よすぎるほどの食慾を恵まれてゐるが、どうも睡眠はよくない、いつも不眠或は不安な睡眠に悩んでゐる、睡られないなどゝはまことに横着だと思ふのだが。
此温泉はほんたうに気に入つた、山もよく水もよい、湯は勿論よい、宿もよい、といふ訳で、よく飲んでよく食べてよく寝た、ほんたうによい一夜だつた。
こゝの湯は熱くて豊かだ、浴して気持がよく、飲んでもうまい、茶の代りにがぶ/\飲んでゐるやうだ、そして身心に利きさうな気がする、などゝすつかり浴泉気分になつてしまつた。

 十一月十一日[#「十一月十一日」に二重傍線] 晴、時雨、――初霰、滞在、宿は同前。

山峡は早く暮れて遅く明ける、九時から十一時まで行乞、かなり大きな旅館があるが、こゝは夏さかりの冬がれで、どこにもあまりお客さんはないらしい。
午後は休養、流れにはいつて洗濯する、そしてそれを河原に干す、それまではよかつたが、日和癖でざつとしぐれてきた、私は読書してゐて何も知らなかつたが(谿声がさう/\と響くので)宿の娘さんが、そこまで走つて行つて持つて帰つて下さつたのは、じつさいありがたかつた。
こゝの湯は胃腸病に効験いちじるしいさうなが、それを浴びるよりも
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