、縷々数千言を費やし、例を古今東西に引用し、その論を明かにせり。吾等にして誤るなくんば、記者が能力自覚説は期せずしてニイチエ[#「ニイチエ」に傍線]が威力の意志説と符節を合するが如し。非乎。天渓君の提供せる幾多の質問は、以上の論を以て凡べて解釈せらるべきを信ず。
之を要するに美的生活論は、近来最も痛快なる論文なり。唯本能[#「本能」に傍点]といひ、悪心[#「悪心」に傍点]といひ、美的[#「美的」に傍点]といふが如き用語例の、頗る従来の意義と相異なれるが為に、幾多読者の、その真意を解するに至らず、為めに批評家等の誤解を来たし、彼等をして敵なきに矢を放たしむるに至りたるが如きは、吾等窃かに高山君の為に遺憾とする所なり。
吾等が美的生活論に対する卑見は、実の此の如し。若し不幸にして、高山君の真意は茲にあらずして、他に存することあらば、読者は吾等の卑見を以て、吾等が美的生活論と思惟せむも妨なし。



底本:「近代浪漫派文庫 14 登張竹風 生田長江」新学社
   2006(平成18)年3月12日初版発行
入力:田中敬三
校正:門田裕志
2009年11月13日作成
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