ば 折々に 彼の紫だつ夜半の雲を破りて
燦然たる 群星底に
さる長髯の光りものゝ かゞやく尾を長く牽きて
此の孤島頭を過ぐるに似たり
彼れが広やかなる麗しき額は 日の光にかゞやきぬ
美しく磨きたる蹄もて 彼れが軍うまは 踏歩しゆきぬ
彼れが兜の下よりは 石ずみにもまがふ黒きちゞれ毛
房々と垂れかゝり流るゝ如くゆらめきぬ 其の駒の進むにつれて
カメロットへとさしてゆく其の駒のすゝむにつれて
岸よりも また 河よりも
其の人の面影は ひらめきて映りけり 水晶の鏡のうちに
「テラ リラ」と 河辺にそうて
歌ひけりサー・ランセロットは
姫は織り物を打棄てつ 姫は機をも打棄てつ
姫は居間を三あしあゆみつ
咲く蓮の花をも見つ
兜をも羽根をも見つ
姫はカメロットを見わたしけり
突然 織り物はひるがへり 糸は八散してたゞよひぬ
憂然として明鏡は まッたゞなかより割れてけり
天罰 我が身にくだりぬと
シャロットの姫は叫びけり
其の四
吹きしきるあらしだつ ひがし風に
青ぐろく黄ばめる森は 見るうちに 葉落ち痩せゆく
はゞ広き川の浪は 其の岸に 悲しく
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