けて一ぺん火に焙《あぶ》る必要がある。本来は江戸前《えどまえ》風に蒸しにかけないで、関西風に直《じか》に焼くがいい。醤油のたれ[#「たれ」に傍点]を甘くしないで、直焼きにしたものの方が茶漬けには適する。
直焼きのうなぎは、もとより、肉や皮が多少はかたいけれど、茶漬けの時はあつい茶をかけて、しばし、蓋《ふた》をするために直焼きであっても、すぐ皮がほとびて、結構やわらかくなる。
うなぎもクセの激しいものだから、茶漬けに用いるようなのは、よほど材料を選択しないと美味くない。第一、養殖うなぎはなんとしてもいけない。これはクセの有無《うむ》にかかわらず、やわらかいだけが特徴で、決して美味いものではない。かといって、天然のうなぎが必ずしもいいとはいえない。これはうなぎの項で述べた通りである。
要するに、はも、あなご、うなぎの茶漬けを美味く食べようというようなことは、もとよりぜいたくな欲望であり、これを賞味する味覚の働きもデリケートなものであるから、これを志すほどの者は、材料のよしあしを充分注意してかからなくてはならぬ。
なお、はも、あなごの材料選択の際、馬鹿に大きいのは買わないように注意す
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