車蝦の茶漬け
北大路魯山人
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)吟味《ぎんみ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)八|匁《もんめ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)まき[#「まき」に傍点]
−−
えびのぜいたくな茶漬けを紹介しよう。これまた、その材料の吟味《ぎんみ》いかんによる。これから述べようとするのは、東京の一流てんぷら屋の自慢するまき[#「まき」に傍点]と称する車えびの一尾七、八|匁《もんめ》までの小形のもので、江戸前《えどまえ》の生きているのにかぎる。横浜|本牧《ほんもく》あたりで獲《と》れたまきえびを、生醤油《きじょうゆ》に酒を三割ばかり割った汁で、弱火にかけ、二時間ほど焦《こ》げのつかないように煮つめる。
こんなえびは誰の目にも無論見事だし、一尾ずつで上等のてんぷら種になる材料だから、よほど経験のある食通《しょくつう》でなければ、やってのける度胸は出まい。これをいきなり佃煮《つくだに》風にするのは、もったいない気がして、ちょいとやりきれないが、それをやりおおせるなら、その代わり無類《むるい》の
次へ
全3ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
北大路 魯山人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング