車蝦の茶漬け
北大路魯山人

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)吟味《ぎんみ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)八|匁《もんめ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)まき[#「まき」に傍点]
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 えびのぜいたくな茶漬けを紹介しよう。これまた、その材料の吟味《ぎんみ》いかんによる。これから述べようとするのは、東京の一流てんぷら屋の自慢するまき[#「まき」に傍点]と称する車えびの一尾七、八|匁《もんめ》までの小形のもので、江戸前《えどまえ》の生きているのにかぎる。横浜|本牧《ほんもく》あたりで獲《と》れたまきえびを、生醤油《きじょうゆ》に酒を三割ばかり割った汁で、弱火にかけ、二時間ほど焦《こ》げのつかないように煮つめる。
 こんなえびは誰の目にも無論見事だし、一尾ずつで上等のてんぷら種になる材料だから、よほど経験のある食通《しょくつう》でなければ、やってのける度胸は出まい。これをいきなり佃煮《つくだに》風にするのは、もったいない気がして、ちょいとやりきれないが、それをやりおおせるなら、その代わり無類《むるい》の
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