す。また私が多少でも製陶いたしますところから、それら古陶磁を一つの教科書としております。この意味で集めたものが今度展覧会に出しましたものであります。それをなぜ売るのかといえば、これはもう大分刺激がなくなったからであります。十年も持っておりますと、どんな尊いものでもだんだん刺激がなくなってくる。悪くいえば鼻についたのであります。よくいえば骨にも肉にも浸み込んだというようなものであります。そこでこれを一旦また他の好者《すきもの》に頒《わか》ちまして、そうして新しい刺激を得るような古陶器を再び取り入れようというのが今度展観する私の目的であります。それは一面からいいますと、ずるいというようなことになるかも知れませぬが、しかし考え方によりましては、私が陶製をだんだん進めます上において他によい方法がないのであります。私が岩崎、三井でなくても少し豊かな人間でおりますと、こんなけちなことをしないでもよいのでありますが、やむをえませぬ状態から、お店に御厄介になって目的に進むというような企てを考えたのであります。
底本:「魯山人の美食手帖」グルメ文庫、角川春樹事務所
2008(平成20)年4月18日第1刷発行
底本の親本:「魯山人著作集」五月書房
1993(平成5)年発行
初出:「星岡」
1934(昭和9)年
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年12月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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