受けたと思ったら、棺桶に片足突っこんでいることの証明みたいなことになってしまったり……。
 さて、なにをいおうと思っていたのかな。そうだ。ある晴れた日の午後であった……のつづきだ。わたしは、犬をつれて散歩に出た。いや、そうではない。小学校の先生と散歩したのだ。その先生は、遠いところからわたしを訪ねてきてくれたのである。福井県のひとであった。わたしに、福井の産物をいつも送ってくれるひとだ。福井のガクブツ[#「ガクブツ」に傍点]である。
 わけても福井のうに[#「うに」に傍点]は日本一だ。方々の国々にうに[#「うに」に傍点]の産地はあっても、おそらく福井のうに[#「うに」に傍点]は格別である。福井の四箇浦《しかうら》のうに[#「うに」に傍点]はとげがない。とげというか、針というか、あのくちゃくちゃと突き出た奴がないのだ。割ってみると、他のうに[#「うに」に傍点]のように、やわらかい肉がなくて、からの中にかたまった、乾いたような、ちょうど木の実のような奴がはいっている。落とせば、かんからかんのかんと鳴るだろう。それを取り出して、俎板の上で、念入りに何度もムラのないように練られたものだ。そのう
前へ 次へ
全7ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北大路 魯山人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング